模擬試験当日は、実戦経験を積むにはお誂え向きの曇天だった。
重く立ち込めた灰色よりは黒に近い雲からは、今にも雨が降り出しそうだ。
(まるでわたしの気持ちを反映しているみたい)
皮肉げに嘲笑って、ロゼッタは離れたところにいるルーヴを盗み見る。
彼は、いつもの無表情でフィオーレと何やら話していた。
普段と変わらない態度だが、その瞳が、少し前に動揺して揺れたのを、ロゼッタは見てしまった。
(聞いてない、って顔だったわね……でも、もともとフィオーレさんと組む気でいたことには変わりないようだけど)
なんだかもう、考えるのも疲れてしまって、ロゼッタは今日の空模様にも負けない重い溜息をついた。
「おい、他所事に気を取られてしくじんじゃねえぞ」
「ンッ……!ちょっとやめて」
いきなり尻を揉まれ、ロゼッタは隣に立つテオフィルスを遠慮ない力で小突く。
わずかに魔力をこめたロゼッタの拳はそこそこに威力があったはずだが、テオフィルスは鼻を鳴らしただけで痛がる素振りもない。同じく、魔力でガードしたのかもしれない。
そんなところにも実力差と戦闘経験の差を感じ、ロゼッタは腹立たしくなる。
「忘れないでよ、貴方はわたしを鍛える使命があるんだから」
「なにが使命だ。鍛えてぇならさっさと抱かれとけっての」
「それは違うわね。わたしは自分が他と劣っているとは思っていないもの。進んで貴方なんかに抱かせてあげるほど安くないわ。でも、わたしがしくじったらさっきみたいにセクハラでもなんでもしてちょうだい。それを全力で躱して逃げる……それがまたわたしの訓練になるわ」
「……俺様から逃げるのも訓練、ね。はっ、おもしれぇこと考えるな」
遠回しに「信用もしていないし模擬試験の他の参加者同様、本気で排除するつもり」と告げられても、テオフィルスは楽しそうに笑うだけで、気分を害した様子もない。
本当に、普通の人間とは感性が違うらしい。
(そのほうが利用しやすいけど……調子狂うわ)
そんなことを考えているうちに、模擬試験開始を知らせる炎の球体が空に打ち上がった。
*
模擬試験がはじまって数刻。想像以上にロゼッタは体力を消費していた。
襲ってくる参加者を返り討ちにし、こちらからも仕掛けて脱落者を増やしていくことはやりがいがあっていいのだが、とにかく隙あらばセクハラしてくるテオフィルスがしつこい。
先ほども、ターゲットから身を隠している間に散々体を弄ばれた。
特にいじられた乳首がひりひりして痛い。その上、下腹部がきゅんきゅんして集中が切れそうだ。
今も、周囲に人の気配がないことを確認した途端、テオフィルスはいつぞやの触手を持ち出してロゼッタの秘部に潜り込ませ、ズッチュ……ズッチュ……と遅い抽迭をさせている。
「は……あう……ちょ、っと……!やめさせてよ……!ああッ、あっ」
「やめさせる?違うな、おまえが自分でどうにかするんだろうが」
「こ、の……!ふぅ……ん……!」
近くの木に手をついて中腰になり、自分で引き抜こうと下半身にもう片方の手を伸ばすロゼッタを、テオフィルスは愉快そうに見る。
「ほんっと、学習しねえなあ、おまえ」
「なに……きゃあッ!?」
「まんこが塞がってるから大丈夫だとでも思ったか?ココにも、いたずらはできるんだぜ?」
「ちょ、ちょっとやめてテオフィルス……ひいッ!?あ、うそ……やあ……!」
ロゼッタが穿いている戦闘用の丈の短いスカートを捲り上げ、触手を仕込まれる際に引き裂かれた、魔力が込められていて頑丈なはずのタイツを下着ごとさらに千切ったテオフィルスは、剥き出しになったまろやかな尻たぶを左右に開き、秘められた窄まりと、触手が好き勝手している秘部をしげしげと眺めた。
「いやらしくヒクヒクしてんじゃねえか。期待してたんだろ?」
「ちが……!こんなところでやめて……あん!?」
「だから、“やめて”じゃねえだろって。自分でなんとかするって言ったのはてめえだろ」
「触手使うなんて卑怯よぉ……!いやあああ!?指……どこに挿れて……!」
「どこって、ケツ穴だろ。ああ、今から“ケツまんこ”になるのか」
冗談じゃない、とロゼッタはなんとか触手を抜き取り、テオフィルスから離れようともがく。
だが、ぬるぬるしている触手は掴むことすらままならず、意思があるようにどんどん奥を目指している。
さらに、ロゼッタの思考を奪うように、触手の動きとはぜんぜん違う手荒い動作で、テオフィルスがロゼッタの窄まりに突き入れた指を掻き回す。
「う”……あう”……!あぐ……お”、お”、お”……」
「もう降参かあ?ククク……ケツ振ってるだけじゃ止まらねえぞ……?」
「あ”ひぃ……!?あ”、奥……!?あ”あ”あ”あ”……!」
「そろそろか……」
触手が、ロゼッタの最奥をこじ開けようとしている。
そのおぞましいほどの快感に、ロゼッタは舌を突き出し、目をぐりんと上に向け、逃げ出すこともできずに喘ぐ。
ぐちゃぐちゃに尻穴を掻き回すテオフィルスの指の動きも、ラストスパートというようにはやくなり、ロゼッタは獣のような嬌声を上げた。
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