
グチュグチュと卑猥な音が豪華な室内に響く。
「____ア”ッ!?あっ、いやあ!だめぇ……殿下、やめ………アアアア!?」
天蓋付きのベッドの上で、この国____アルテミスナイト王国の王子であるナハト・アルテミスに押し倒され、彼の太く長い、凶器のような肉棒に秘部を貫かれて揺さぶられているのは、エステレラ・ヴィアラッテアである。彼女は王子の元・婚約者____になるはずの少女だ。
「アンッ、奥いやあ……もうやめて………婚約は破棄に…………オ”ゥ”ッ!?」
ガツッ!子宮口を強く穿たれ、エステレラは侯爵家の令嬢に相応しくない声を出してしまう。恥ずかしくて口を塞ぎたいけれど、頭上で両手を拘束されており、動かすことはできなかった。肌と肌をぶつける乾いた音がどこまでも繰り返される。
______どれくらい、胎内に彼の熱い欲を注がれただろう。、もうよくわからなくなって、エステレラは薄れかけた意識の中、なぜこんなことになったのだろうかとぼんやり考えていた。
(わたしは……ナハト様に婚約破棄を申し込むつもりでお時間をいただいただけだったのに……)
だって、そうしなければ、エステレラはナハトに”また”殺されることになってしまうのだ。
「僕から逃げるなんて許さないよ、エステレラ……。君には僕の子を産んでもらうからね」
月明かりに照らされながら薄く微笑むナハトは、ゾッとするほど美しく、そして妖しげだった。
♝二度目の人生♝
エステレラ・ヴィアラッテアには、一度目の人生の記憶がある。一度目の人生でも、彼女はアルテミスナイト王国の第一王子であるナハト・アルテミスの婚約者であった。ナハトは幼い頃から容姿端麗であり、その髪は月光のごとく輝く金で、その瞳は夜空の星々を閉じ込めた宝石だった。一方のエステレラは、灰色に近い髪と薄青い瞳で、よく地味だと言われていた。はじめてナハトに婚約者として会った時、彼は口にこそ出さなかったけれど、その目で雄弁に「こんな地味なやつが婚約者か」と語っていたほどだ。
______それでも、エステレラはナハトが好きだった。
「………………」
きっと、彼は覚えていないだろうけれど。まだ婚約がきまっていなかった頃、エステレラはナハトに会っていた。ランチュリラというアルテミスナイト王国の伝統楽器を嗜んでいるエステレラは、ある日のコンクールでとても緊張していた。そんな彼女に声をかけ、お守りだと言って指輪をくれたのがナハトだった。その時は彼が王子だなんて知らなかったけれど、それからずっと、エステレラはナハトが好きだったのだ。彼の婚約者になれて幸せだった。彼に好きになってもらいたくて、エステレラなりにいろいろ努力もした。
けれど。
(けっきょく、ナハト様が恋をしたのは………)
______エステレラではなかった。
彼が惹かれた相手は、エステレラとナハトが通う名門校・ニュクスセレナの一つ下の後輩______エアリアル・ベルダだった。流星のように流れるプラチナブロンドのエアリアルは、入学してすぐにファンクラブができるほど稀有な美貌の持ち主だった。ナハトも、一目で彼女を気に入ったようだった。そして、いつしか二人は恋に落ち、気付けばエステレラは二人にとっての敵となっていたのだ。
(まさか、殺されるほど憎まれてるとは思わなかったけれど)
一度目の最期の記憶を思い出し、エステレラはぶるっと身震いする。
______消してしまいたい。ナハトに、愛した人に、剣で貫かれる記憶なんて。
(あんなの、二度とごめんだわ)
どうしてなのかわからないけれど、せっかく記憶を持った状態でやり直しができるのだ。早々に、婚約を破棄してナハトとエアリアルから離れなければ。なぜかことごとくナハト本人によって婚約破棄を妨害されてきたけれど、先日、とうとう学園にエアリアルが入学してきたのだ。もう猶予はない。ふたりから離れるために、エステレラは二度目の人生を生きていると悟ってからずっと練っていた計画を実行に移すことにした。

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